経営難でも「SLの運行続ける」 JR

長崎潤一郎
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 【北海道】JR北海道は10日、観光列車として運行している同社唯一の蒸気機関車(SL)の検査を2021年度に実施すると発表した。深刻な経営難に陥っているため、国が義務づける検査期限を迎えるのを機に廃止も検討したが、運行を続けることになった。

 費用は客車のリニューアルも含めて4億円。島田修社長はこの日の会見で、「鉄道の旅の魅力づけにSLは欠かせない。運行をやめると技術継承が途絶え、再開できなくなる。清水の舞台から飛び降りる気持ちでお金を投入する」と語った。

 検査に入るSL(C11形171号)は1940年製造で、75年にいったん廃車となった後に復活し、2000年から「SL冬の湿原号」として釧網線(釧路―標茶)を冬季限定で運行している。今季も1月23日~2月28日の土日祝日を中心に運行している。石炭ストーブでスルメをあぶって食べられるなど観光客に人気だが、今季はコロナ禍で乗客が前年の約7割に低迷しているという。

 検査は13年度以来。「全般検査」と呼ばれ、自動車の「車検」にあたる。車体を解体してボイラーなどの主要設備を総点検し、来季の運行開始までに終える。

 老朽化が進む客車5両のリニューアルも21~22年度に順次実施する。雨漏りする天井の補修や、木製の床の張り替えなどを検討している。和式トイレは洋式に交換するという。

 同社はかつて2両のSLを運行していたが、検査などの費用が重荷となり、函館やニセコ地区を走る「SL函館大沼号」と「SLニセコ号」を14年に終了。1両は16年に東武鉄道(東京)に無償貸与した。

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この記事を書いた人
長崎潤一郎
経済部|企業取材キャップ
専門?関心分野
経済政策全般、エネルギー政策、税制